退職金 支給と不支給の要件
退職金請求権は、就業規則(退職金規定など)、雇用契約、または労働協約などによって支給の条件を明確に定めたときに法的な権利として請求できます。
このとき、退職金規定では、懲戒解雇の場合や競合他社に転職した場合には、退職金を不支給にすると規定するものもあります。
もっとも、懲戒解雇ならば必ず退職金を不支給にすることが認められる訳ではありません。判例や主要な学説は、退職金不支給が許されるのは、従業員の過去の労働に対する評価を全て抹消させてしまう程度の、著しい不信行為があった場合に限られると解しています。つまり、会社に損害を与えた程度や、企業秩序を乱した程度などの個別具体的な事情を考慮して退職金不支給の適否を検討することとなります。
また、裁判では、競合他社に転職した場合に全て退職金を不支給にすることが認められるわけでもなく、会社の損害の状況やノウハウや顧客の流出の可能性などが総合考慮されます。競合他社に転職した場合に全て退職金を不支給にするとした条項が公序良俗(民法90条)無効とされて退職金の全額を支払うように命じた判決もあります。
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