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懲戒解雇だから退職金は支払わないと言われました

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質問

私は勤続25年ですが、初めて勤務外で酒気帯び運転で捕まったところ、会社から懲戒解雇され、さらに就業規則により退職金を全額支払わないと言われました。収入がなくなったうえに退職金までなくなると本当に困ります。解雇は仕方ないとしても退職金はなんとかならないでしょうか。

 

アドバイス

酒気帯び運転の違反の状況などの事情次第では、退職金を請求できる可能性があります。

 

就業規則に、懲戒解雇の場合は退職金を支払わないという規定を設けることは広く行われています。懲戒解雇事由に該当する場合には、企業秩序を乱すなど会社に有形無形の相応の損害を与えているから、退職金を支払う必要はないとの意識をもつ経営者も多いのが現実です。

 

もっとも、退職金は、従業員の功労報償的な性質と賃金の後払い的な性質を併せ持つとされています。退職金が賃金の後払い的な性格も有するのであれば、退職金没収には相応の理由が必要になります。そこで、懲戒事由に該当する事実があったとしても、すべての場合に退職金不支給が認められるとは限らず、退職金不支給に値するような深刻な事情がある場合に限られると考えられています。

 

判例や主要な学説は、退職金不支給が許されるのは、従業員の過去の労働に対する評価を全て抹消させてしまう程度の、著しい不信行為があった場合に限られると解しています。会社に損害を与えた程度や、企業秩序を乱した程度などの個別具体的な事情を考慮して検討することとなります。

 

質問の場合、勤務外(私生活上)での酒気帯び運転かつ初犯な点は、不信行為の程度を軽くする方向に作用します。職業も影響します。逆に、仮にタクシー運転手のような職業の場合は、運転手の酒気帯び運転は会社の社会的評判を大きく毀損する行為ですから、不信行為の程度を重くする方向に作用します。

 

したがって、状況次第では、退職金を請求できる可能性があります。

 
 
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