カテゴリー:交渉と裁判手続の知識

内容証明郵便の意義と効果

カテゴリー: 交渉と裁判手続の知識

内容証明郵便とは、「誰が、誰に、いつ、どんな内容の手紙を出したのか、さらにその手紙を受け取ってもらったこと」を、郵便局が公的に証明してくれる郵便です。請求書を送る場合、内容証明郵便で送ることで、将来相手方から「そんな手紙受け取っていない」「請求を受けたことなどない」という反論を受けて、水掛け論になることを防ぐことができます。

 

また、内容証明郵便を送ることは、裁判外の請求(催告)にあたりますので、時効が6ヶ月間中断します(民法147条1号 同153条)。これは残業代の請求に大きな効果を生む場合もあります。

残業代の請求の時効期間は2年間(労働基準法115条)です。ですから会社を辞めてから、過去2年分の残業代の請求をしようとする場合、訴訟(労働審判)の提起が遅れると、その分だけ残業代を請求できる期間が短くなってしまいます。例えば退職後に訴えの準備を始めて3ヶ月経ってから訴え(労働審判含む)を提起した場合、時効期間が2年間なので、訴えの時点から2年前までの請求しかできないことになり、結局1年9ヶ月分(2年間マイナス3ヶ月)の残業代請求しかできないことになってしまいます。そこで退職後すぐに内容証明郵便を送ることで、まずは時効を中断させておき、6ヶ月の時効中断期間の間に訴えの準備をするということが有効なのです。口頭や通常の手紙によっても請求(催告)と時効の効果も生じますが、前述のように相手方から「そんな手紙受け取っていない」「請求を受けたことなどない」という反論を受けやすいので、内容証明郵便による通知が使われます。

 

また、弁護士名で内容証明郵便で請求することは、相手方にこちらの本気度、つまり法的措置も辞さないという覚悟を示す事実上・心理上の効果もありますので、相手方が内容をよく読んで真剣に解決方法を検討するきっかけにもなって、紛争の解決に近づくこともあります。

さらに、弁護士名の内容証明郵便受け取ると、相手方がその請求内容の妥当性について弁護士にアドバイスを求めるきっかけになることも多く、相手が弁護士からの客観的アドバイスを得ることで、解決に近づくこともあります。

 
 

弁護士を通じた任意交渉とは

カテゴリー: 交渉と裁判手続の知識

内容証明郵便の送付の後で、内容証明郵便で伝えた当方の主張や要求に対する相手方の反応や主張に応じて,弁護士が相手方とで交渉を行い,解決を図ります。

弁護士から会社に交渉を申し込むことにより、合理的な思考をする会社であれば、自らの法的な立場を客観的に再検討する大きなきっかけともなりますので、解決に近づくこともあります。

 
 

労働審判とは

カテゴリー: 交渉と裁判手続の知識

労働審判とは、平成18年(2006年)、増加する労働事件を迅速に解決するために導入された制度です。

審判官(裁判官)1名と,労働問題の専門的な知識と経験を有する2名の労働審判員によって構成される労働審判委員会(中心は裁判官)が、労働者と使用者との間の紛争につき、調停(話合いによる解決)を試み、調停がまとまらない場合は労働審判をする手続きです。

労働審判の大きな特徴は、平均約80日程度と裁判より相当に短い期間に終了することです。裁判所に呼ばれる日(期日)も原則3回までと定められていますが、実際に1回目の期日で、見通しの方向性や調停案が示されることが8割以上あるのです。

また、労働審判委員会(中心は裁判官)は、当事者の話を直接聞いて心証を形成する(自分の考えを固める)ことも多いので、特に第1回目の期日には弁護士だけでなく当事者本人も出席することが望ましいとされています。

一方が労働審判の結果に不満な場合は通常の裁判に移行しますが、実際には8割以上が労働審判で終了して裁判にはいかないようです。

 
 

裁判の手続きと裁判期間

カテゴリー: 交渉と裁判手続の知識

裁判は、訴状の提出から、1ヶ月半程度で、最初の期日が設けられ、それから約1ヶ月ごとに書面のやりとりを原告・被告が複数回してそれぞれの主張を展開します。双方の主張が出尽くしたところで、証人尋問(証拠調べ)を半日〜丸1日行います。それから双方が最終書面を提出し、その1ヶ月半から2ヶ月後に判決がでます。 

以上の裁判手続きのほとんどは書面の提出によって行われるので、裁判期日では、裁判官からの書面の内容についての質問や次回の書面提出の内容と期日の打ち合わせのみで20分程度で終わることも多いのです。期日に出席するのは弁護士のみの場合が多く、当事者本人が出廷するのは証人尋問(証拠調べ)だけという場合が多いです。

また、上記裁判のいろいろな過程で、裁判官から「和解する気持ちはあるか」と聞かれることも多いです。

 

裁判期間は、労働審判に比べると相当長く、主張の応酬があった場合には、早くても6〜9ヶ月、紛糾すると1年から2年かかることもあります。

 
 

労働審判と裁判の違い

カテゴリー: 交渉と裁判手続の知識

労働審判と裁判の一番の違いは期間の長さで、労働審判は平均2ヶ月程度で結論が出るのに対し、裁判は1年程度はかかることを覚悟したほうが良いのです。 

労働審判は非公開なので、会社側の関係者の出席が制限される場合があります。一方裁判は公開なので、証人尋問(証拠調べ)の際には、法廷の傍聴席に部外者も含めて出席できます。

もっとも、労働審判は迅速な解決を図るため、「ざっくりとした」事実認定をする傾向にあると言われます。そこで、例えば不当解雇の紛争で、解雇の根拠たる事実の存在自体に争いがある場合は、しっかりと主張を尽くした上で裁判官に事実認定をしてもらったほうが良いという考えで、裁判手続のほうが適している場合もあります。例えば、解雇の理由がパワハラ行為であるところ、当事者はパワハラ行為はしていないと正面から争っている場合などです。 

 
 
Top